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福岡高等裁判所 昭和35年(ネ)561号 判決 1960年10月31日

控訴人 増本安男 外一名

被控訴人 佐賀トヨタ自動車株式会社

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人等の連帯負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述竝に証拠の提出認否は、控訴代理人において、本件自動車の売買が被控訴会社と控訴人増本との間になされたこと、控訴人増本は右自動車の代金として契約と同時に金五万円及びその後の月賦金中合計金六〇、三四〇円を支払つたこと竝にその後金三万円を被控訴会社に支払つたことは認めるが、右金三万円支払の時期は昭和三四年六月二〇日頃であると述べた外、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

理由

被控訴会社は昭和三三年一二月一二日控訴人増本に対し中古車トヨペツト一九五六年式小型四輪トラツク一台を代金四〇万円及び月賦販売による利息金を加えた合計金四一三、三四〇円で売渡し、その支払方法として契約と同時に金五万円、昭和三四年一月三一日金三〇、三四〇円、同年二月から四月までは毎月末日金三万円宛、同年五月から昭和三五年一月までは毎月末日金二七、〇〇〇円宛を支払うこととし、自動車の所有権は代金完済まで被控訴会社に留保すること、買主が月賦金の支払を怠つたときは被控訴会社は催告を要せずして直ちに売買契約を解除し、自動車を引揚げることができること、その場合既払の内入代金は返還を要せず、且つ買主は未払代金相当額を違約損害金として被控訴会社に支払うこと、但し被控訴会社は引揚げた自動車の時価を参酌し、違約金の額を手加滅することもあることを約定したこと、控訴人増本は右代金中契約と同時に支払うべき金五万円及びその後の月賦金中合計金六〇、三四〇円を支払つたのみであることは当事者間に争なく、成立に争のない甲第一号証によれば、控訴人橋本は控訴人増本の本件売買契約上の債務につき連帯保証をしたことを認めることができる。

原審証人田中藤吾、池田末夫、副島篤、井手康貴の各証言竝に右田中証人の証言により成立を認め得る甲第二号証を総合すれば、本件自動車は控訴人増本が買主となり、契約上の一切の責任を負担したのであるが、実際には同控訴人の娘婿である訴外池田末夫がその営業用に使用する目的で購入したのであつて、前記約定代金も実際上同訴外人において支払うこととしていたが、前記のとおり昭和三四年二月分までの月賦金を支払つたのみで、その後の支払を怠つていたところ、同年五月頃に至り同訴外人は(控訴人増本の代理人として)本件自動車の売買契約を解除したい旨を、被控訴会社の販売員である訴外副島篤に申出で、同人の了解の下にその頃本件自動車を被控訴会社の唐津出張所に送り届けて返却したこと、その際訴外池田は右副島に対し、自動車を返却した上、金三万円を追払いすることにより本件売買契約を一切清算するよう取計い方を依頼し、副島も右訴外人の希望が容れられるよう尽力方を約束したが、その後被控訴会社においては結局自動車の返却はこれを了承したけれども、金三万円の追払いにより売買契約を清算することには承諾を与えず、その頃右返却された自動車を評価し、その時価を金一五万円と査定し、未払代金三〇三、〇〇〇円から右自動車価格を控除した金一五三、〇〇〇円を損害として控訴人増本に賠償請求することに決定したこと、を各認めることができる。控訴人は、訴外池田と前記副島との間において、自動車を返却した上、金三万円を追払いすることにより本件売買を一切清算する旨の合意解除が成立し、その効果は当然被控訴会社に及ぶ旨の主張をするけれども、前認定のとおり被控訴会社の販売員に過ぎない訴外副島が被控訴会社を代理してそのような約定をする権限を有したものと認むべき何らの証拠もないから、控訴人の右主張は採用できない。

以上認定の事実に徴すれば、被控訴会社と控訴人増本との間において、被控訴会社の損害賠償請求権を留保して、本件売買契約の合意解除がなされたものと認めるのが相当である。

控訴人は、本件契約の内容中、契約解除の際被控訴会社は自動車を引揚げた上、未払代金を違約金として買主から徴収する旨の特約は、買主に苛酷であり、売主に暴利を得させる結果となるから、公序良俗に反し無効であると主張するけれども、買主の債務不履行による契約解除の場合、買主が支払うべかりし売買代金は該債務不履行により売主の受くべき通常の損害(契約履行により得べかりし利益の喪失)であつて、本件契約において未払代金相当額を違約金として徴収する旨を約定したのは、違約金の名を用いているけれども、実際においては売主に生ずべき通常の損害を賠償するという当然のことを約定したものに過ぎず、問題はその場合損害額の算定につき、売主たる被控訴会社が引揚げた自動車の価格が考慮の対象となるかどうかの点のみにあるが、本件においては前記のとおり、契約自体においても引揚自動車の時価を参酌し得ることと定めており、被控訴人もまた自ら右時価を損害額たる未払金相当額から控除すべき旨を主張しているのであるから、前記特約が暴利行為であるかどうかにつき改めて論断する必要はないものと考える。

さすれば買主たる控訴人増本の債務不履行により、被控訴会社は前記未払代金三〇三、〇〇〇円から本件自動車の返却時の価格を控除した金額相当を損害として、控訴人増本及び連帯保証人たる控訴人橋本に対し賠償請求し得るものというべきところ、前記甲第二号証及び原審証人田中藤吾の証言によれば本件自動車の前記返却当時の価格は金一五万円であつたことを認めることができる。控訴人は当時金三二六、一三六円の価格を有した旨主張するけれども、該主張は本件自動車が昭和三三年一二月当時において金四一三、三四〇円(これには月賦販売による利息が含まれていることは前記のとおりである)の価格を有したことを前提とし、通常の減価償却の方法による机上の計算であつて、甲第二号証の評価が直接現物についてなされたものであるのに対比し、直ちにこれを採用することはできない。

被控訴会社の本件損害発生後において、控訴人増本が本件につき金三万円を被控訴会社に支払つたことは当事者間に争がない。

さすれば控訴人両名に対し、以上認定の損害金残額一二三、〇〇〇円及びこれに対する損害発生後である昭和三四年六月一九日以降年六分の商事法定損害金の連帯支払を求める被控訴人の本訴請求は、正当としてこれを認容すべく、右と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので民事訴訟法第三八四条第九五条第八九条に従い主文のとおり判決する。

(裁判官 竹下利之右衛門 小西信三 岩永金次郎)

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